SMCコラム

営業力強化の考え方と人事評価5(営業プロセス/業務プロセス2)

6.業務プロセス(2)

【営業プロセス3】受注成約後から納品(サービス提供)完了するまでの「業務プロセス」

2)業務プロセスのその他のポイント

1)では、「引合プロセス~商談プロセス~業務プロセス」という一連のフローにおける業務プロセスのポイントを解説しました。

業務プロセスでは上記にとどまらず、次のような対応も取り扱うこととなります。

図表4.業務プロセスで必要な対応【3カテゴリー】

No.

カテゴリー

概要

受注成約した案件の納品完了管理

引合プロセス~受注プロセスと順に進捗してきたケースです。
※1)で解説したケースです

次なる案件の引合抽出と情報収集

業務プロセスでは納品までに顧客と実務的な打ち合わせを重ねます。ここで引合プロセスを同時進行させて、次なる案件の引合を抽出します。

3-a

リピート案件管理

一度受注成約した案件が、同じ条件で継続発注される、いわゆるリピート案件です。

例えば部品メーカーが顧客(完成品メーカー)に部品を納品し続けるケースなどが該当します。
このようなリピート案件の管理は、業務プロセスで取り扱います。

3-b

メンテナンス案件管理

受注成約した案件で納品後、商品のメンテナンスを実施する場合です。

例えば顧客に設備を納入した後、設備が稼働している期間においてメンテナンスを継続的に発注されるケースなどです。
このようなメンテナンス案件の管理は、業務プロセスで取り扱います。

当社が営業コンサルティングを実施する場合は、図表4の業務プロセス全体を標準で15の工程に分解し、工程ごとの実行内容を設計して営業力強化を図ります。

No.2、No.3-a、No.3-bを解説いたします。

■No.2 次なる案件の引合抽出と情報収集のポイント

業務プロセスでは発注後納品までに顧客と実務的な打ち合わせを重ねるものです。
その際、今回の採用理由(勝因)や将来の見込案件、顧客の方針や組織体制、意思決定機構などについて情報を入手しやすくなるので、情報収集活動を同時に展開します。
受注成約するまでの「引合プロセス+商談プロセス」と「業務プロセス」の大きな違いは、顧客と営業員の関係性です。

受注成約するまでは売り手(営業員)と買い手(顧客)のいわば「対向する関係」となり、まだお互いに信頼感を持てないため、多くの場合、買い手(顧客)は売り手(営業員)に多くの情報を開示しません。

一方、受注成約後の業務プロセスでは、売り手と買い手の対向関係ではなく営業員は「顧客と共に、顧客の目的を果たす支援をするパートナー」になります。顧客と同じ立ち位置に立つことになるのです。

このような立ち位置にいると、顧客との心理的距離が非常に近くなりますので、顧客も徐々に信頼してくれて情報を開示するようになります。この間にしっかりと次の提案や情報収集を行い、新たな案件の引合プロセスに繋げます。

【業務プロセスの人事評価項目事例②】
「次なる案件の引合抽出と情報収集」に関する人事評価項目としては、以下のようなものが例として挙げられます。

会社として収集する情報項目を決めた上での「情報収集率」
業務プロセスでの「提案実施率」
業務プロセスでの「案件化率」

※上記はあくまでも例示です。御社にとって核となる行動を指標化し、営業の人事評価項目として設定してください。

■No.3-a リピート案件管理のポイント

受注成約した案件が同じ条件で継続発注される「リピート案件」のケースでは、引合プロセスや商談プロセスを経由せず「業務プロセス」が繰り返されます。

例として、完成品の製造メーカーである顧客に対し、受注企業が部品を継続納品する場合が挙げられます。

この場合、顧客商品(完成品)の生産量に比例して、受注側の部品の売上があがります。

一定規模以上の会社では多くの場合、リピート案件管理は個々の営業員ではなく「営業業務部」などの受注処理の専任組織が担当しています。
この方法は合理的で、リピート案件の受注処理は基本的に個々の営業員ではなく別組織が担当すべきです。

営業員は、付加価値が高い引合プロセス・受注プロセスに集中特化するべきだからです。営業員が継続案件の受注処理業務をすると、「事務処理」しかしていないにもかかわらず、「自分は営業としての仕事をこなせている」と錯覚するおそれもあります。

では、リピート案件は受注処理の専任組織に丸投げで良いのでしょうか?
当社としては、それでは会社としての営業力強化につながらないと考えております。
リピート案件であっても、営業員が年間・半期・四半期ごとの売上を予測し、差異が出た場合は都度、要因を分析するべきです。

・顧客参入マーケットの環境変化
・顧客の販売戦略・商品戦略の変化
・顧客から提供された予定販売数量のぶれ(下ぶれすることが多い)
・顧客の類似商品への意図しない転用
・顧客既存商品のリニューアル
・競合商品へのリプレイス

こういった様々な要因が、売上予測からの差異を生じさせます。

予測が外れて継続取引受注額が減少した場合、御社の受注商品が標準品であればまだしも、顧客カスタム品の場合には在庫リスクが増大します。最悪のケースではその分の利益が吹き飛んでしまうかもしれません。
このような問題が現実化しないように、顧客接点の最前線にいる営業員が緻密にリピート案件を管理する必要があります。

また、適正に案件の管理・チェックを行うには顧客側の戦略等について情報収集が必要ですから、営業員がこの管理を行うと、顧客についてより深く理解できます。結果として次の案件の引合プロセスを進めやすくなる効果も期待できます。
さらに現場での商品使用情報を入手し、商品に改善の余地がないか検討することによって御社の商品をさらに進化させることも可能となります。

【業務プロセスの人事評価項目事例③】
営業員のリピート案件管理に関する人事評価項目としては、以下のようなものがあります。
会社として収集する情報項目を決めたうえでの「情報収集率」
売上予測差異分析の「報告書自己完結率」

※上記はあくまでも例示です。御社のリピート案件管理の核となる行動を指標化し、営業の人事評価項目に設定してください。

■No.3-b メンテナンス案件管理のポイント
メンテナンス案件とは、納品後に商品のメンテナンスを実施する場合です。
耐用年数の長い設備を導入したケースなどをイメージしていただければと思います。
多くの企業において商品納入後は営業員の手を離れ、「保守部門」がメンテナンスを担当しています。会社によっては、保守部門の中に保守契約専門の保守営業員を配置している例もみられます。
したがってメンテナンス案件では、顧客が次々と設備導入するような事業拡大期にでもない限り、顧客と営業員の距離は自然と疎遠になります。

そこでメンテナンス案件を適切に進めるには、営業員と保守部門・保守営業部門との綿密な情報共有が重要です。特に設備の使用情報と推定稼働率は、次の案件の引合プロセスにも重要ですので、営業員がしっかり把握しておくべきです。

【業務プロセスの人事評価項目事例④】
メンテナンス案件管理に関する人事評価項目としては、以下のようなものがあります。
会社として収集する情報項目を決めたうえでの「情報収集率」
保守基本契約の「案件別締結率」
保守売上と利益の「絶対額」または「目標達成率」

※上記はあくまでも例示です。御社のメンテナンス案件管理の核となる行動を指標化し、営業の人事評価項目に設定してください。

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