【営業プロセス2】引合をいただいた後に受注に結び付ける「商談プロセス」
商談プロセスは、顧客から頂戴した「引合」を「受注」に結び付ける活動です。
引合には「能動的引合」「受動的引合」がありますが、その両方が受注につながる可能性を持っています。
「能動的引合」...営業員が提案した結果、引合を得たケース
(引合プロセスで提案したことにより、顧客からの引合につながったケース)
「受動的引合」...従来からの取引関係の延長で、顧客から引合を得たケース
参考までに、いわゆる「御用聞き営業」とは、すべての引合が受動的引合である営業活動のことです。
通常、顧客自身において「何が欲しいか」が明確になっており、顧客側の希望や依頼から案件がスタートするので「受動的引合の件数>能動的引合の件数」になります。
そして、受動的引合の場合は、顧客自身で欲しい商品が明確になっているので、御社以外の競合にも声を掛けていると想定され、商談プロセスでは複数社間における受注競争が発生します。
商談プロセスにおいて、顧客は最終的な発注先の意思決定までに以下のようなステップを踏みます。
①提案を受けた複数社の商品を比較
②顧客の購買に関する判定基準によって各社商品を評価
③評価結果を顧客組織の意思決定機構において、より多角的に検討
④複数社が基準を満たす場合、価格をはじめとする条件交渉を実施
⑤最終的な発注先を決定
商談プロセスでは、まずは顧客側の基準を満たす商品を提示すること、次に顧客社内の意思決定機構を把握して対策を講じること、さらには条件交渉も行いながら、人としての顧客の心理分析も併用して最終的な受注成約を目指していく必要があります。
なお営業にとって最重要の指標である「受注成約率」は、この商談プロセスの中で取り扱います(後に詳述)。
顧客が最終的に商品を意思決定するまでの過程は、顧客の心理過程に着目すると、おおむね次のようになります。
図表3.商談プロセスにおける顧客の心理過程と営業の行動
顧客の心理過程 |
営業の行動 |
1.開示 |
顧客の目的と要求を正確に把握し、商品を選定します。 |
2.比較・納得 |
競合と比較されたときに価格勝負に陥らないよう、以下に注意して提案書と見積書を提出します。 |
3.評価 |
顧客組織の意思決定機構を把握し、影響力のある人物に自社の力量や商品メリットを説得的に伝えます。 |
4.交渉・決定 |
3の評価段階で複数社が基準を満たす場合、条件交渉が開始されるので、営業シナリオを判断軸として合理的に交渉を進めます。 |
発注先決定(受注成約) |
当社が営業コンサルティングを実施する際、商談プロセスを標準で15の工程に分け、工程ごとに実行すべき内容を設計します。
商談プロセスで重要なのは、案件の進捗管理です。
引合プロセスでは、比較的少人数の顧客(担当者など)を対象に提案をすれば足ります。
一方、商談プロセスでは意思決定関与者が増えるため、1工程ごとに丁寧に進めることが重要となります。
商談プロセスの流れの大枠は、次の①~⑥のとおりです。
①顧客の目的を実現可能であることをしっかりと書面で伝える
②それを商品仕様に落とし込む
③顧客の目的を実現できる仕様を持った商品の見積書を提示する
※このとき商品がオーバースペックにならないよう細心の注意を払う必要があります。
④競合の有無を確認する
⑤顧客の意思決定機構の関与者へ、自社の力量と商品メリットを伝え、理解・納得してもらう
※このとき必要に応じて、担当する営業員以外の上位の人員(営業管理職や場合によっては役員など)も関与します
⑥最終的な条件交渉を行う
巷では、営業力強化のための「商談」というと「交渉テクニック」ばかりにスポットライトを当てられがちですが、交渉テクニックは商談プロセス全体の中でごく一部に過ぎません。
交渉テクニックを高めると営業員個人の商談対応力は向上する可能性がありますが、組織的な営業力強化には結び付きにくいので注意が必要です。
個人のテクニックではなく、会社全体の「仕組み」として、商談プロセスをマネジメントすることが重要です。
このプロセスマネジメントにより、受注成約率の向上も可能となります。
図表3と上記①~⑥を参考にしながら、御社の状況に適合した「受注成約率を向上させられる商談プロセス」をご検討ください。
【商談プロセスの人事評価項目の事例紹介】
商談プロセスにおける営業職員の人事評価項目における「受注成約率」は、営業の全プロセスの中で最重要です。
受注成約率=(成約件数)÷(引合案件数)
「受注成約率」は営業機能においてもっとも重視すべき指標です。
「受注成約率」を因数分解していくと、その会社における営業活動のほぼ全てが分かります。
しかし実際の企業の現場では、営業の最重要評価指標は「売上」と「利益」と考えられている例が多々あります。
「売上」と「利益」のみに大きく焦点が当たると「結果」がすべてとなってしまい、重要な「プロセス」が無視され、営業力強化に結びつきにくくなるのでご注意ください。
営業の人事評価項目から「売上」と「利益」を削除する必要はありませんが「受注成約率」やそれを因数分解して細分化した項目と比較すると、ウェートは低くすべきです。
※なお厳密に言うと商談プロセスは受注成約するまでの過程なので、売上が未計上の段階です。当社では、商談プロセス後の「業務プロセス」において売上と利益を取り扱います。
「受注成約率」以外の人事評価指標は、会社の営業スタイルによって異なり、たとえば以下のようなものが考えられます。
・仕様が複雑で商品選定に困難を伴う場合の「適正商品選定率」
・三次提案書の作成についての「三次提案書作成の自己完結率」
・顧客の意思決定機構の把握についての「顧客別意思決定機構把握率」
・顧客と選定基準を共有するための「選定基準作成の自己完結率」
初めてご覧になる人事評価項目もあるかも知れませんが、営業力強化のためにはこういった指標を設定し、マネジメントしていく必要があります。
根本的な営業力強化のためには、営業活動の「質」の改善を伴わなければなりません。
また上記は例示ですので、御社の商談プロセスの「核」となる部分を指標化し、状況に応じた営業員の人事評価項目を設定してください。
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