当社では毎年、新年度の目標管理に関して多くの会社からご相談をお受けします。
目標設定時の課題、目標達成に向けた業務遂行時の課題、目標達成度評価の課題など、それぞれの会社で運用上の課題をお持ちです。
特に4月~5月は3月決算の会社では目標設定の時期に当たりますので、目標設定時の課題に関するご相談が多数です。
その中で「目標管理制度至上主義」的な運用をされて、深刻な状態になっているケースが散見されますので、本稿では正しい目標管理制度の運用と、目標管理と同等に重要な概念である経営方針管理について解説します。
目標管理を正しく運用するため初めに理解しておかなければならないのは、経営方針管理と目標管理の違いです。これらが明確に切り分けられていないと目標管理の適切な運用は困難です。
当社では、それぞれ次のように定義しています。
経営方針管理とは、経営活動の核となる年度経営方針を組織構造に従って課レベルまで展開し、テーマ化して個人に割り当て、年度方針実現のためにプロセスマネジメントすること。
目標管理とは、マネジャーが組織としての目標を部下に割り当てる際、部下が働きがいを得られて自律的に動機づけできるように責任を与えるとともに自己管理をさせること。
意味合するところがかなり違うことをご理解いただけると思います。
しかしご相談にこられた会社の多くは、経営方針管理の機能を目標管理制度に持たせようとして、運用に困難が伴っていました。
本来、経営方針管理は経営企画部門(機能)が担うべきです。それを人事部門(機能)が主管する人事評価制度のサブシステムに過ぎない目標管理制度に持たせようとしているので、うまくいくはずがありません。実務的にも人事評価の目標管理シートは年に数回しか登場しないので、これによって経営方針管理はできません。
経営方針のプロセスマネジメントの仕組みをしっかりと構築したうえで、そのアウトプットを人事評価制度によって評価するのが正しい方法です。