SMCコラム

等級制度の考え方 2(等級の役割の設計)

2.等級と役割の設計方法

社員に等級制度にもとづいた「昇格」(承認)を行うことによりモチベーションを高めるには、どのように等級制度を設計すればよいのでしょうか?

当社では、基本的に等級を10段階に分けることを推奨しています。

役員層までの役割分担を10等級程度に分割すれば、等級別の役割を明確化しやすいためです。
高卒の新入社員が入社すると、定年まで約42年です(定年60歳の場合)が、10等級あると、優秀な社員については、3~4年に1度は昇格させることが可能になります(管理層以上では5年に1度とします)。

この3~4年という期間が非常に重要です。

等級ごとに求められる役割が違うので、昇格すれば大部分が新しい仕事になりますが、3~4年の期間を設定すれば以下のサイクルで効率よく業務をこなしていくことが可能となるからです。

1年目はがむしゃらに新しい仕事に取り組む。
2年目は1年目の経験を生かしてより高いレベルで仕事を完結させるレベルに達する。
3~4年目は完成されたレベルで現等級の仕事をしながら、上位等級の仕事の大枠を先取りして理解する

このように、3~4年という期間は社員のステップアップのために非常に合理的です。

10等級構成の年齢と役職についての一例を表に示します。

図表2.等級と年齢の例

階層

等級

年齢(例)

役職(例)

上級管理層

10

53~

執行役員

9

48~53

部長

管理層

8

43~48

部長代理

7

38~43

課長

指導層

6

34~38

課長代理

5

31~34

係長

4

28~31

主任

初級層

3

25~28

副主任

2

22~25

1

18~22

この表は、職種に関係なく共通利用可能です。
上記の昇級の過程においては、初級層から指導層へ、指導層から管理層へ、管理層から上級管理層へと3回大きく役割が変化します。その変化に適応できるかどうかで、当該社員が最高等級である10等級まで昇格できる人材かどうかが決まります。

3.社員の役割が大きく変化する昇格

役員に昇格するまでの各等級の役割を、組織運営・マネジメントの視点から考えてみましょう。
すると以下の3つの段階で社員は未経験の新しい役割を期待されることとなります。

① 係長クラスへの昇格時(図表2の5等級に昇格)
② 課長クラスへの昇格時(図表2の7等級に昇格)
③ 執行役員への昇格時(図表2の10等級に昇格)

具体的な昇格ステージと新たに期待される役割をまとめると、下表のとおりです。

図表3.昇格後に必要となる新たな役割

昇格ステージ

新たな役割

①係長クラス
への昇格時

<昇格後の役割の大きな違い①>
・「自分がする」→「部下にさせる」
【ポイント】
・業務指示・管理をできるようになる
・部下の個性を把握して適切なコミュニケーションを図る

<昇格後の役割の大きな違い②>
・目標達成のための新たなプロセスを構築する(戦術構築)
【ポイント】
・専門知識を活用して仮説を立てて業務プロセスを設計する
・問題点から課題を設定し、解決のための方針を決定する

②課長クラス
への昇格時

<昇格後の役割の大きな違い>
・戦略を策定する
・部下を育成する
【ポイント】
・上位戦略を策定及び展開して、自部門のあるべき姿を描けるようになる
・部下を育成し、活用して管理できるようになる

③執行役員
への昇格時

<昇格後の役割の大きな違い>
・自部門だけでなく、会社全体としての戦略策定にかかわる
【ポイント】
・自社の経営資源の全体像を理解する
・全社レベルにおけるビジネスモデルを把握し、経営者と一体となって課題を設定、解決する

このようにステージが変わると期待される役割も変わるため、社員が昇格したときに経験したことのないことを実践し、解決しなければならない場面があります。
そのようなとき、会社としては昇格した者が混乱状態に陥らないよう、昇格前に類似の経験をさせておくなど、周到に準備を進めておくべきです。

「昇格前の準備」と「実際の昇格」、「昇格後の新たな業務の実践」という一連の流れを「仕組み化」し、育成体系として整理しておけばスムーズに等級制度を運用することができます。

(2015年11月16日公開)

(2020年2月29日更新)

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