人事評価制度は、人事制度の3本柱(等級制度、人事評価制度、賃金制度)の中で、運用上の要となる制度です。
社員の行動を司る重要な制度ですので、経営側の意図が十分反映されている必要があります。
経営的な観点から人事評価制度を考えるとき、次の3点が重要です。
①評価項目を明確に提示し、社員が提示された行動を実行しやすくする
②社員の行動を正しく評価し、その結果を昇格・昇給に結びつけ、社員の内発的・外発的モチベーションを上げる
③明確な評価基準(レベル1~5等)を作り、その内容を社員教育に利用する
経営側が社員に対して経営方針を示し、社員がその方針に沿った行動をとりやすいように促し支援するのが人事評価制度の役割です。
そして社員が行動した結果を経営側が正しく評価し、社員に「昇格」や「昇給」という形で報いていきます。
これが最終的に仕事のやりがい、働きがいにつながっていきます。
実務としては、上記の人事評価制度の3つのポイントを「人事評価シート」に具現化していきます。
人事評価シート設計の最重要ポイントは次の2点です。
①人事評価項目~社員に経営方針に沿った行動をとらせる
②人事評価基準~レベルを明確に定め、目標を持たせる
経営側が社員にとらせたい行動を「評価項目」にするとともに、公正な判断によって社員の納得感を保持し、目標を持たせるために「評価基準」を示します。
本来、評価項目は経営方針により変化させるべきものです。しかし各企業の評価項目を拝見すると、10年以上前に評価シートを作成してから一度も項目を変更していないケースも多々あります。
このような場合、人事評価項目と現実の行動が乖離して「評価しないといけないからとりあえず評価している」だけという、いわば "人事評価の惰性運用病" にかかってしまいます。
何とかしてこの病気を治さなければなりません。
人事評価項目を検討する際、大きく次の2つのアプローチ方法があります。
<方法1>方針を徹底するため、方針管理システムの運用を促進する
<方法2>職種別・等級別に社員のやるべき仕事を明示する
<方法1>方針を徹底するため、方針管理システムの運用を促進する
企業が経営方針、部門方針を策定していて、社員がその方針に従って行動する必要がある場合、そういった行動を促進するための人事評価項目を設計します。
【項目例】
①将来構想
②経営課題形成
③部門経営計画策定
④計画達成行動
⑤計画進捗チェック・行動修正
このアプローチによる人事評価制度設計のポイントは、方針管理システム運用において「最も重要な要素は何か」を検討し正しく把握することです。
<方法2>職種別・等級別に社員のやるべき仕事を明示する
方法1のような方針管理方法がなじまない組織では、社員の職種別・等級別にやるべき仕事を明確にして人事評価項目を設計します。このとき単なる業務の羅列ではなく、業務プロセスの要諦となる仕事を抽出することが大切です。
【項目例(営業職)】
①顧客の課題について情報収集する
②取引の可能性を拡げるよう働きかける
③顧客にとってのメリットを、資料を用いて説明し、理解してもらう
④商品の顧客メリットを把握する
⑤顧客メリットを水平展開する
このアプローチによる人事評価項目設計のポイントは、部門ごとの業務の質を高め目標を達成するために、何をすべきか検証することです。
方法1・2ともに、目標設定と結果の管理を行うため「進捗報告書」を作成します。
進捗報告書に記載するポイントは以下の2つです。
① 評価対象期間の最終時点でのゴール(目標値)
② ゴール(目標値)までのフェーズとスケジュール
進捗報告書の中ではゴールのみならず、業務計画まで明らかにします。
すると実務に即した内容となり、実務と乖離して形骸化するリスクが発生しません。
適正な進捗報告書の作成は、人事評価制度を有効なものとするために非常に重要です。
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